2026年3月13日
いびき・無呼吸が
心臓のリズムを乱す?
睡眠時無呼吸症候群と不整脈の深い関係
「いびきをかく」「夜中に目が覚める」という方は要注意。睡眠中の無呼吸が心房細動などの不整脈を引き起こすことが、近年の研究で明らかになっています。
❤️ 心房細動
⚡ 最新アブレーション治療
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、眠っている間に気道が塞がり、呼吸が何度も止まる病気です。「10秒以上の呼吸停止」が1時間に5回以上繰り返される状態を指します。
本人は眠っているため気づきにくく、「最近疲れが取れない」「日中眠い」「いびきがひどいと言われる」といった症状から発見されることがほとんどです。日本では男性の約15%、女性の約5%が罹患していると言われています。
いびきをかく、夜中に何度も目が覚める、朝起きても疲れが取れない、日中に強い眠気がある、肥満・首が太い・顎が小さい、アルコールをよく飲む。これらが複数当てはまる場合はSASの可能性があります。
SASの重症度分類(AHI)
診断の基準となるのは「無呼吸低呼吸指数(AHI:Apnea Hypopnea Index)」で、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数で重症度を判定します。
| 重症度 | AHI(1時間あたりの回数) | 状態 |
|---|---|---|
| 正常 | 5回未満 | 正常範囲 |
| 軽症 | 5回以上〜15回未満 | 軽症 |
| 中等症 | 15回以上〜30回未満 | 中等症 |
| 重症 | 30回以上 | 重症 |
SASが体に与える影響
検査と治療
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簡易検査(自宅でできる)手首に装着するタイプの装置で、睡眠中の酸素飽和度や鼻の気流を測定します。外来で機器を貸し出し、自宅で一晩検査できます。
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精密検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ)脳波・眼球運動・胸郭運動・酸素飽和度などを同時に記録する精密検査。入院が必要ですが、より正確な診断が可能です。
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CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)専用のマスクを装着し、睡眠中に気道へ空気を送り続けることで無呼吸を防ぎます。中等症以上のSASに有効で、高血圧や不整脈の改善効果も期待できます。
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マウスピース・生活習慣改善軽症の場合はマウスピース(口腔内装置)や、減量・禁酒・横向き寝などの生活習慣改善が有効です。
SASと心房細動の深い関係
心房細動は心臓の上部(心房)で電気信号が乱れ、脈が不規則になる不整脈です。自覚症状がない場合も多いですが、放置すると心臓内に血栓ができ、脳梗塞のリスクが健常者の約5倍に高まる怖い病気です。
近年、睡眠時無呼吸症候群との密接な関係が注目されています。
心房細動の発症リスク
SASが合併
アブレーション後の再発率上昇
なぜSASが心房細動を引き起こすのか?
無呼吸
(酸素不足)
過活動
負荷増大
拡大・線維化
発症
無呼吸による低酸素状態が繰り返されると、自律神経のバランスが乱れ交感神経が過活動になります。また、胸腔内圧の変動や炎症性サイトカインの増加が左心房を拡大・線維化させ、心房細動の電気的基質が形成されていきます。
SASは冠動脈疾患のリスクも高めます。低酸素による酸化ストレスと交感神経亢進は動脈硬化を促進し、狭心症・心筋梗塞の発症リスクが2〜3倍高くなることが報告されています。「胸痛はないが、いびきがひどい」という患者さんでも、循環器的な評価が必要です。
心房細動治療とSAS管理はセットで
SASを治療せずに心房細動のアブレーションを行っても、再発リスクが高くなることがわかっています。CPAPによるSASの適切な管理を行うことで、アブレーション後の心房細動再発率を下げられることが報告されています。
- 動悸・脈の乱れを感じることがある
- いびきや睡眠時無呼吸を指摘されたことがある
- 日中の強い眠気・倦怠感が続いている
- 高血圧・肥満・糖尿病がある
- 家族に心房細動の人がいる
心房細動のカテーテルアブレーション治療(最新情報)
薬で脈を整える「薬物治療」のほか、心房細動の根治を目指す方法として「カテーテルアブレーション(経皮的心筋焼灼術)」があります。太ももの付け根からカテーテルを挿入し、心房細動の原因となる部分(主に肺静脈周囲)を焼いて電気信号を遮断する治療です。
心房細動の約90%は、心臓の肺静脈の出口から発生する異常な電気信号が引き金となります。肺静脈の出口をぐるりと焼いて電気的に遮断する「肺静脈隔離術」が基本の治療です。
3つのアブレーション方法を比較
現在、国内で行われているアブレーションには主に3種類あります。2024年11月には待望の新技術「パルスフィールドアブレーション」が日本でも承認されました。
高周波電流で心筋を熱で焼灼する、最もスタンダードな方法。1回の通電で治療できる範囲は5〜6mm程度で、肺静脈周囲を数十回に分けて焼きます。
柔軟性が高く、肺静脈隔離以外の追加焼灼も対応可能。長年の実績があり豊富なエビデンスがある。
食道や横隔神経などの隣接組織への熱傷リスクが一定程度ある。手技時間が比較的長い(2〜4時間程度)。
発作性心房細動の1年成功率:約85〜90%
バルーン(風船)を肺静脈に押し当て、冷凍(-40〜-60℃)で凍結焼灼する方法。1回で1本の肺静脈全体を隔離できます。
操作がシンプルで手技時間が短い。高周波と同等の成功率。近年は持続性心房細動にも適応拡大。
横隔神経麻痺が稀に起こることがある。肺静脈隔離以外への対応が限定的。
発作性心房細動の1年成功率:約80〜85%
熱を使わず、高電圧の短時間パルス電場で細胞膜に穴をあけ、心筋細胞だけを選択的に破壊する最新技術。2024年11月に日本で薬事承認。
食道・横隔神経・肺静脈などの周辺組織へのダメージが極めて少ない。手技時間が短い(1〜2時間程度)。
現状は主に肺静脈隔離への適用。溶血・冠攣縮性狭心症など固有の合併症に注意が必要。日本での長期データは蓄積中。
発作性心房細動の1年成功率:約80〜85%(クライオと同程度)
⭐ 2024年11月 日本承認
※各アブレーションの成功率はあくまで目安です。患者さんの心房細動の種類・心臓の状態によって異なります。
従来の高周波やクライオは「熱」を使うため、心臓に隣接する食道や神経にダメージを与えるリスクがありました。PFAは心筋細胞に特異的に作用する特性を持ち、食道関連合併症・肺静脈狭窄・横隔神経麻痺の発生率が極めて低く、より安全な治療として急速に普及しています。欧米ではすでに主流となっており、日本でも2025年以降、導入施設が増えています。
アブレーション後もSAS管理を忘れずに
アブレーション治療を受けても、睡眠時無呼吸症候群が未治療のままでは再発率が約25%上昇するとの報告があります。心房細動の治療とあわせて、SASのスクリーニング・管理を行うことが、長期的な再発予防において非常に重要です。
動悸・脈の乱れが気になる方、いびきや睡眠の質が心配な方、アブレーション後の経過管理など、お気軽にご相談ください。必要に応じて専門施設への紹介も行っています。
🛏️ 当院の睡眠時無呼吸検査について
当院ではウォッチパット(WatchPAT)を使った睡眠検査を行っています。手首と指先に小型の機器を装着するだけで自宅で検査でき、入院不要で睡眠時無呼吸の有無や重症度を評価できます。「検査が面倒そう」と思っていた方も、気軽にご相談ください。
